EnOcean IoTシステム開発コンテスト
最優秀賞
- 数クリックで簡単に出来る EnOcean All-In-One IoT プラットフォーム
リモッテ・テクノロジーズ株式会社 福士晴夫様 - 「配線なし、設定なし」 - 電源に挿すだけでデータが集まる夢のゲートウェイ!
株式会社グリーンノート 立石 彰様
優秀賞
- EnFy
ishigaki様 - 自転車で計測する路面状況、「Yes, my road」
cozy様 - カンタン!EnOceanで洗濯機IoT
Yamada3様
必見!コンテストビデオ(3時間14分)
EnOcean IoT システム開発コンテストってなにもの??
エネルギーハーベスティング無線通信技術のパイオニア、EnOcean(エンオーシャン)。
電池不要の無線通信技術の開発で有名ですね。
「IoTの投資と運用コストを最小化させる」独自の特許技術が、欧州を中心に世界中に広まっています。
EnOceanは、企業名であると同時に、通信規格の名称でもあります。
EnOcean規格は、バッテリーレスもしくは超低消費電力なだけでなく、強固なセキュリティーでも有名です。
まさに、IoTにはぴったりと言えるでしょう。
そのテクノロジーを世界中のパートナー企業と共有し世界のIoTを盛り上げていこう、という任意団体が今回ALGYANとコラボする「EnOcean Alliance(エンオーシャン アライアンス)」です。
EnOcean Allianceは世界で約400社、日本で40社以上が参加し、積極的に活動しています。
日本は世界で3番目に無線規格が許可され、EnOcean Allianceとしても日本市場に大変期待しているそうです!
いっぽうで、日本市場はまだまだ未開拓で、エネルギーハーベスティング無線通信技術において多くの伸び代、つまりビジネスチャンスがあります!!!
エンジニアとして見逃せない分野ですね!
これを機に、あなたもEnOceanの採用事例と背景技術に触れてみませんか!
というとで、新製品のEnOcean マルチセンサー STM550J の発売を機会に、EnOcean Alliance と ALGYANではタッグを組んでEnOceanの技術セミナー、ハンズオンセミナーと豪華商品付きの開発コンテストを行いました。21人のIoT 開発勇者による熱き戦いの記録がここにあります!
これを機にみんなで集合知を結集しながら、一緒にテクノロジーの「今」と「未来」に熱い思いを馳せましょう!
Don’t sleep through life!
ぼーっと生きてんじゃねえよ!
コンテストConnpass ページ
- 観覧可【オンライン】熱き挑戦者たち!EnOcean IoTシステム開発コンテスト・本番審査会!!!
- 【オンライン】EnOcean IoTシステム開発コンテスト!『直前追い込み会』
- 【オンライン】プレゼント付!EnOcean IoTシステム開発コンテスト!meet up
- 【オンライン】EnOceanテクニカルセミナー#2【応用編】勝手にハンズオン!
- 【オンライン】EnOceanセミナー#1:バッテリーレス無線センサー技術でわくわくドキドキ!
ひだかせんせいの講評
全般
審査方法と作品の傾向など、全般的なコンテスト作品の状況をお伝えします。
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審査方法
審査は、EnOcean Alliance アジア担当副会長 の板垣氏、Algyan 理事長の小暮氏と日高が各発表者のLTを見ながらリアルタイムで行い、集計しました。
技術点、アイデア点、ビジネス点の3部門に分け、オンラインスプレッドシートで各5点満点で採点し、全LT終了後に採点に間違いが無い事と、各授与賞を確認しました。
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応募状況
デバイス供給の問題により、実機を使った meet up トレーニング から本番審査会 までが1か月弱という、応募者に厳しい開発期間となってしまいました。
しかしながら完成度が高い作品が多く、入賞作品は特にユニークなアイデアを上手く実現させた作品、見せ方や技術作業に手間をかけた作品があり、IoT開発コンテストとしては成功だったと思います。また、賞品数量の準備の都合により惜しくも入賞を逃した作品もありました。今回は審査の時間的制約により、特別賞などは用意出来ましたでした。この様な残念賞的なものへの対応は、コンテストを開催する上での今後の課題です。
全般の総括を以下の表にまとめました。31人に機材を配布して、21の参加者に成果を発表して頂きました。また17人の方に、何らかの動作する作品を制作して頂く事が出来ました。
meetup は勿論、追い込み会や、発表直前まで多数の参加者から技術的な質問を頂きました。 全てにお答えしまたが、やはり開発の時間が短くて、本番の発表に間に合わなかった方も居た様子です。NFCの設定がうまく出来ずに悩まれた方もいました。その辺りを救う手立てが十分に用意出来なかった点は残念でした。
- 参加者数、発表数と動作作品数
参加者(機材配布) 成果発表数 動作作品数 31 21 17 - 参加者数、発表数と動作作品数
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作品の傾向
動作した応募作品の全般傾向が分かる様、表に集計しました。
- ゲートウェイ・プラットフォーム種別
Raspberry Pi Windows PC ESP32/M5Stack 12 3 2 - 情報出力手段(複数出力有り)
Local Web LINE Mail Offline Other(Smart Speaker, KNX-LED, M5Stack) 5 10 4 2 1 3 - 汎用クラウド活用
AWS Azure その他 4 2 4 - ゲートウェイ・プラットフォーム種別
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利用技術とサービスについて
事前セミナーで紹介していないのにもかかわらず、Node-Redを含むJavaScriptを使用して、シリアルポートからの入力や複雑なビット演算によるデータ取り出しを独自に開発した作品が結構あり、参加者の技術レベルの高さと、IoT分野での JavaScript / Node-Red の普及の高さが明らかになりました。
各作品の必須要件ではありませんでしたが、半数以上の作品がWeb UIを搭載し、また何らかのクラウドサービスと接続した作品も多かったです。 しかしながら結果的に、Webやクラウドの活用が上位入賞の決め手とならなかった点が今回のコンテストの難しさであり、興味深かった点もありまです。今回の様な短期間のコンテストでは、やはりユニークなアイデアをいかに熟成させて見せるかといった点が、高得点に繋がるのではないかと思います。
それでは作品を個別に見ていきましょう。
個別評価
入賞作品を中心に、各作品の紹介と審査時に上がった声を少しだけお伝えします。
最優秀賞作品 2点
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数クリックで簡単に出来る EnOcean All-In-One IoT プラットフォーム
加速度センサーによる無接点軽量ダイヤル(モーション・ロータリースイッチ)のアイデアは、ユニークで素晴らしいです。EnOceanを知らない技術者にも是非見て頂きたい、一見の価値がある応用事例です。この無接点ダイヤルを中心にして、作品を組み立て欲しかったとの声もある程でした。しかし簡単に利用できるオールインワンIoTの Remotte との組み合わせによる、多彩な画面とアプリケーションの披露も盛り沢山でした。特に Remotte ならではのデバイス管理機能の充実さはEnOceanの様々なセンサーとの相性も良さそうで、今後他のEnOceanセンサーとの更なる組み合わせにも期待が持てそうな作品です。満点での最優秀賞受賞でした。[ビデオインデックス]
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「配線なし、設定なし」 - 電源に挿すだけでデータが集まる夢のゲートウェイ!
「マルチセンサーを使う」という今回のコンテストの趣旨から少し外れて、ゲートウェイを全面に出した作品です。しかしマルチセンサーが同一IDで異なるプロファイルを管理出来ないという問題点を指摘し、対策をして実装、完成させてしまった点に、EnOcean技術に詳しい審査員も一目置かざるを得ませんでした。これが無ければ今回テーマでの上位入賞は難しかったかも知れません。独自開発のコンセントに直接装着する商品化を目指した様な小型ケース収納のゲートウェイデザイン、ソフトウェアをRTOS上に実装した技術レベルの高さと、豊富なAWSの各サービスに対応するといった作り込み量の多さも最優秀賞を後押ししました。[ビデオインデックス]
優秀賞作品 3点
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クラウドを活用したリモート監視、リモート制御というIoTのお手本の様な作品。マルチセンサーの機能を有効活用しつつ、Pythonで独自にデータ入力部を作り上げた技術力の高さとPHP/Laravel UIによる通知設定画面等の作り込みの丁寧さで入賞しました。LT発表では強調していませんでしたが、追い込み会で紹介して頂いた Azure IoTHub 接続の独自開発 PythonコードのGitHub 公開も出来が良く、審査ではプラスに働きました。[ビデオインデックス]
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自転車で計測する路面状況、「Yes, my road」
自転車のスポークに磁石を取り付け、回転による磁石の接近による加速度取得という、マルチセンサーでなければ出来ない機能を活用したユニークなアイデアをそのまま作品として完成させました。全作品中唯一、データ表示用UIを持たず、データをローカル蓄積でオフライン渡しという離れ業の作品です。しかしGPSとの組み合わせも独創的で、写真とグラフ、地図をふんだんに使った見事なプレゼンテーションは分かり易く、高評価に繋がりました。この作品発表も必見のLTと言えるでしょう。[ビデオインデックス]
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身の回りのふとした問題を解決、アイデアを有効に活用して完成させた作品。今までありそうで無かった主婦のアイデアを膨らまして作品として作り上げました。マルチセンサーを使用して洗濯機の動作と、動作環境(照明)を監視する点がユニークです。手の込んだ状態表示&通知画面により作品の完成度を押し上げました。特にユーザーインターフェースの出来は秀悦で、ロボット口調(?)のプレゼンテーションは説得力もあり、この手の開発コンテストで上位を狙う方には、どなたでも一度は見て貰いたいビデオです。クラウドに繋がるだけが実用IoTでは無いことを示す典型的な事例ですが、今回は残念ながら競合が強すぎて、僅差で最優秀賞を逃してしまいました。[ビデオインデックス]
惜しくも入賞を逃した作品
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「エネルギーハーベストを活用したゲームコントローラによるアプリケーション」は、釣りのリールに磁石とマルチセンサーの取り付けてリールの回転数を利用したゲームです。未完成でしたが「独居老人管理システム」はベルトのバックルに取り付けたマルチセンサーの装着状態を磁石接触でモニターし、加速度センサーのとともに見守る仕組みです。どちらもマルチセンサーにピッタリの配置場所を見つけるととともに、ユニークな磁石センサーの利用法を提案頂きました。
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「傘管理装置」はマルチセンサーの電波強度だけを使用して、傘の所在の管理を目論んだシステムですが、後述の「セクレタリー時計」と同様、日本国内向けの928MHz FSK のEnOcean電波が良く飛び、電波強度情報の扱い難さを確認するという皮肉な結果になってしまいました。
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「洗濯ものかわいたぞ!」は、Node-RED活用、手作りLEDやRspberry Pi等のハンガー収納など、凝った作り込みで、温度・湿度センサーが洗濯物の乾燥確認に有効であることを示しました。
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「玄関便り」は、マルチセンサーの開閉センサー機能に着目して、M5Stackの手作り受信ボードとで、スマホからの設定も出来、自宅ですでに実用化済という画像満載の丁寧なプレゼンテーションも説得力がありました。しかし出来が良い分、入力が開閉センサーとM5Stackのボタンだけ、出力がLINEメッセージだけというのが惜しかったというか、物足りなさを感じてしまう作品でした。
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「セクレタリー時計」は温度情報で目覚まし時計の時間を制御するというユニークなアイデアです。多数のEnOceanセンサーを接続し電波強度も活用して、他の機能も追加した結果、本来の目的と効果が見え難くなったのが残念です。
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「EnOceanマルチセンサーで改善する物流改善」は、貴重品の運搬監視にマルチセンサーを使うというアイデアです。AWS IoT, Lambda, S3, QuickSightのサービスを並べた割には、出力の説明がメール中心で貧弱になってしまったのが残念です。
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「EnOcean Protocol Monitor」はRaspberry Piで受信したEnOceanテレグラム情報をAWS IoT Coreに上げて、それを手元のM5Stack上に表示させるという、ユニークな装置を実現しました。Raspberry Pi, M5Stackともに専用ケースに入れて、ローカルUIでテレグラム情報をキャラクタ表示出来るレベルまで完成させたのですが、マルチセンサーが本来用途では活用されていませんでした。
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「防犯&見守り用に、ドアの開閉状態を、スマートスピーカー(Alexa)から遠隔確認できるようにしてみた。」は、唯一スマートスピーカーを接続した作品です。Nod-REDで開発し、LINE APIも駆使した凝った作りでしたが、アプリケーションや出力が単なるデータ報告レベルで留まってしまったのが残念です。欧米の家庭では、スマートスピーカーとEnOceanの組み合わせはAI等とも組み合わせて導入済のため、評価は厳しくなりがちです。
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「EnOceanとKNXで実現する?IoTセンサーと設備制御」はマルチセンサーの状態によりKNX経由でカラーLEDを制御する面白い作品です。実質的にNode-REDで実装した EnOcean - KNX ゲートウェイの紹介がメインとなり、マルチセンサーは点灯LED切り替えスイッチの役割です。欧米の制御分野ではEnOcean - KNX ゲートウェイは結構普及して実用化されているため、これも評価は厳しくなりました。
まとめ
個別評価点は載せませんが、僅かの点差で優秀賞に届かなかった作品も数点あり、全体的に高いレベルでした。作品全般については、次のことを感じました。
- 単なる計測にとどまらず、一歩踏み込んだ応用、それもさらに一般に思いつかないアイデアの作品はやはり評価されます。
- 実機を配布したコンテストでしたので、アイデアだけではないデモや実演での完成度の高さや、画面やケースを含めた実機の緻密な作り込みは評価に影響します。
- ビジネス点での評価については、コンテスト募集開始時に示していませんでしたが、最優秀賞2点をはじめ、ビジネス性が高い作品が多かった点も、EnOceanが実IoTビジネスに強いという側面の現れではなかったかと思います。発表作はみな、有用な作品ばかりでしたので、大げさに言ってしまえば、日本のIoTコンテストに一石を投じた形になったと思います。
- マルチセンサーという完成品を使いこなすという、IoTのコンテストとしては少し特殊な条件でしたが、参加者の皆さんにかなり頑張って頂き、多数の様々なアイデアと作品を創って頂くことが出来ました。スタッフとしても楽しむことが出来ましたが、制作者の皆様にもEnOceanの新製品をいち早く使えることも含めて、お楽しみ頂けたのではないでしょうか。
見ている技術者も楽しめる、技術者心をくすぐる良いコンテスト作品、発表会だったと思います。 作品制作に挑んだ皆様、お疲れ様でした。そしてありがとうございました。コンテストに登録して頂いた全参加者に深く感謝致します。ありがとうございました。